◆…府立西城陽高校が行った主権者教育で「文化パルク城陽売却」という、市民の関心が極めて高いテーマを取り上げたことに対し、城陽市役所は①地元で熱い議論となっている問題を主権者教育として取り上げることに疑問がある②市の担当者がおらず、きちんと説明できない状況で、議員が意見を述べたのはおかしい(井関守教育長)ーとして、京都府教委や高校の担当教諭に「報告」したり「事実確認」をしたという。市議会では、「報告」をしたという教育長、「事実確認」を行ったという市幹部職員らの行為により、高校側が委縮し、今後の実施を躊躇したことに対し「教育の中立性を歪めた」(本城隆志議員)「主権者教育に水を差す行為」(土居一豊議員)「パワハラと同じような行為」(宮園昌美議員)など批判が相次いだ。
◆…井関教育長は、「自身の行動の結果」として「西城陽高校と府教委に多大な迷惑をかけた」ことを「反省する」と詫びた(2018年3月27日、予算委総括質疑終了後インタビュー)ものの、行為の元になった自らの主張(府教委には、市議の主張として報告していた)が間違っていたとは言っていない。むしろこの時「学校長と話したが、来年も市議会の協力が得られれば是非実施したい、との意向だった」とまるで、「何も問題はなかったではないか」とでも言いたげな口ぶりだった。果たして、井関教育長が言うように「熱い議論になっている問題」を「主権者教育」で扱ってはいけないのか、検証してみた。
◆…高等学校における「主権者教育」は、「20歳以上」だった選挙権が「18歳以上」に改正された公職選挙法が2016年6月に施行されたことに伴い登場した。新しい分野の教育とあって、関係する総務省(啓発)及び文部科学省(教育)が連携して、「若者の政治参加を促す」ことに主眼を置いた指針を作成した。教師への指導資料として作成されたのが副教材「私たちが拓く日本の未来」(有権者として求められる力を身に付けるために)。この中で最大の眼目は、「現実の具体的な政治的事象を扱う」(副教材の活用に当たって)ことの重要性を説いている点。
◆…従来、教育現場では憲法や議会制民主主義などを「知識」として教えていたが、「有権者としての自覚」を促すためには、現実に起こっている目の前の事象を扱い、「話し合いや討論等を通じて生徒が自らの考えをまとめていくような学習が求められる」(現実の具体的政治事象を取り扱うことによる政治的教養の育成)と基本的な考えを示している。その上で、留意点として「異なる意見や対立する意見を理解し,議論を交わすことを通して,自分の意見を批判的に検討し,吟味していくこと」(実践的な教育活動を行うに当たっての留意点①)の重要性を上げている。
◆…これを西城陽高校の「主権者教育」にあてはめれば、「文化パルク城陽売却問題」という、「意見の異なる具体的な政治的事象」を取り上げた上で、「生徒の考えや議論が深まるよう様々な見解を提示」(実践的な教育活動を行うにあたっての留意点②)するため
市議会の全会派の代表の意見を聞いた内容は、ドンピシャの主権者教育そのもの。むしろ今回は、議員と生徒との間で議論を戦わすまで進んでいない物足りさなはあるものの、その方向性は寸分の間違いもなく、これに口を差しはさむ城陽市役所の言動は、筋違いも甚だしく、実に愚かの極みというほかない。
◆…「市の担当者が居ない所で議員がしゃべるのはおかしい」という教育長の言葉は、今もって信じ難い。「文パル売却問題に触れないでほしい」という本音の発露と考えられるが、民主主義の基本に関わる問題だけに聞き流せない。多くは語らない。ただ「君の意見に賛成はできないが、君が意見を述べる権利は死んでも守る」(18世紀フランスの小説家ボルテールの言葉)ことが民主主義の基本だと思う。【藤本博】