◆…選挙権が20歳から18歳に引き下げられる(2016年6月改正公職選挙法施行)ことを踏まえ、総務省及び文部科学省は15年9月、若者の政治参加を促すため高校教育現場における「副教材」(私たちが拓く日本の未来)を作成、全国の都道府県及び指定都市の教育委員会に対し、その「周知と必要な指導を適切に行う」(通知)よう指示を付して配布した。その中で「政治的教養を育む教育推進」や「現実の具体的な政治的事象を扱う」ことの重要性を説いている。これを受けて京都府教育委員会もまた、17年3月に「京都府における主権者教育の指導指針」を作成、その中で<主権者教育の視点>として「健全な民主主義社会とは、身近な地域社会の小さな討論に始まり、いろいろな段階において討論が行われ、話合いがもたれた上で、問題の解決、決定が図られる社会である。話合いにより合意形成を図ることの重要性を学ばせることが重要である」と意見の異なるテーマを取り上げ、議論することが肝要としている。
◆…国や都道府県のこうした指導指針に基づき、大阪の高校では、府議会議員を招き「意見交換会」を開いたり、埼玉県の高校では、消費税の軽減税率導入の可否について「生徒間で討論会」を開くなど、全国の高校で、いわゆる主権者教育が展開されている。府立西城陽高校は今年2月14日、国や京都府の指導指針に沿った、全国的にも誇れる先取的で優れた「主権者教育」を、城陽市議会議員を学校に招き、2年生生徒との間で「意見交換会」として実施した。
◆…ところがこの場で「文化パルク城陽売却問題」がテーマに取り上げられたことから、「意見が分かれる問題」に対し「市の担当者が居ない所で市議会議員が意見を述べた」ことに、城陽市の教育長や市役所幹部職員が、過剰反応を示し、「意見の分かれる問題を議論することの重要性」を主眼とした「主権者教育」を否定するかのような、実に筋違いな言動を府教委や高校の担当教諭に投げかけた。市議会で大騒動になった。それは、「気に入らないことは触れささない」という権力のおごりを想起させる、ちいさな町の民主主義に関わる問題だったからに他ならない。
◆…見過ごせない問題だとして始めた連載だが、前回の(中)=4月18日号=掲載後に急転直下の動きがあった。井関守教育長は、「小中学校教育畑に居たので、政治的問題に敏感に反応してしまった」として高校における「主権者教育」に対する自身の認識不足を認め、府教委にクレームを伝えた行為を「すべきではなかった」と猛省した。城陽市教育のトップに居る者として、その軽挙妄動ぶりには首をかしげざるを得ないが、反面「改むるにはばかることなかれ」の実直な対応に、底なしの誠意を感じた。
◆…しかし今もって、教育現場を委縮に追いやった市幹部職員の担当教諭に対する「事実確認」行為は、「問い合わせただけ」(3月27日予算特別委員会総括質疑で奥田敏晴市長)と正当化されたまま。4月19日に共産党市会議員団が「西城陽高校の主体的な教育に対する介入は到底認められない」と批判し、奥田市長に再認識の表明を申し入れたが、5月2日現在、何の音さたもない。「ひとつの事実」に対し、異なる内容の「ふたつの公文書」問題も未決着だ。一連の騒動を巡り開かれた市議会の全員協議会をふり返りながら、異なる公文書についても検証を試みる。
◆…3月議会最終日の3月29日に開かれた全員協議会は、実に興味深いものだった。それは、長時間続いた空虚なお粗末さと一部議員の本質を衝いた言葉が同居していた点。さらに、幹部職員と一部議員が、連携していたかのように、議会事務局作成の「協議記録」を、厳しく攻撃したことだ。市役所内で、異なる担当課の幹部職員間で「事実と違う」「事実そのもの」と議会の場で激しく火花を散らす、かつてこんな光景はみたことなかった。日頃の発言は「風呂の中の屁」とは言わないまでも、ぼそぼそとした語り口の議員が、まるで生き生きと大張り切りで、行政側の擁護に奮闘していた点も印象的だった。
◆…午後2時40分から始まり、終わったのは同6時。3時間20分に及ぶ会議には、関係者ということで井関教育長も冒頭から参加した。「文化パルク城陽売却問題」が、主権者学習のテーマに「何故なったのか」や、「聞いた」とか「聞かなかった」とか実にどうでもいいような熱い議論が延々と続いた。「2つの公文書」問題では、一方の当事者である長谷川雅俊政策戦略監付次長と薮内孝次教育部長の2人を「呼ぶ」「呼ばない」ですったもんだの末、賛否がとられ「呼ぶ」派が多数を占めた。早速に姿を現した2人は、議会事務局が作成したメモ(2人と議会事務局側の萩原洋次局長、谷口浩一次長の4人が協議した内容を記録したもの)に対し、「事実ではない」(長谷川次長)、「名誉に関わる」(薮内部長)などと激しく攻撃を加えた。その前に「メモを我々はもらってない」「メモには事実と違うことが書いてあるのではないか」などと自民党議員からの応援発言もあり、元気付いたかのようだった。
◆…そんな中、事の本質を衝いた発言を行ったのは3人の議員だけだった。土居一豊議員(城陽絆)は、井関教育長が「担当者が居ない所で文パル売却問題について議員が発言したことはおかしいと思った」(3月23日予算特別委員会)と発言したことをとらえ、「私たち議員は、市の担当者が居ないところでは何もしゃべれないのか。議会報告会も出来ないではないか。何故、私たちをしばろうとするのか」と追及した。教育長は「市としての説明責任が必要と考えた」と苦しい答弁を返した。乾秀子議員(公明)は又、「一体、どこが主権者教育になじまないというのか。具体的に説明を」と回答を求めたが、誰も明確に答えることはなかった。
◆…すったもんだで、議論がくるくると何時間も空回りしている時に突如、それまで苦虫を噛みつぶしたような顔つきで、じっと聞いていた宮園昌美議員(ネット)が怒りの一気発言。文パル売却問題をテーマにしたとか、しないとか下らない話の連続に「何を聞かれても、答えるのが議員。市教委や行政が、学校などに問い合わせをしたのが大きな間違い。一切すべきではない。受けたほうは、問い合わせとはとらない。パワハラも同じこと。不毛の議論をいつまで続けるのか」と一喝した。すると、それまでの喧騒が潮が引いたようにシーン、「宮園議員の言う通り」と賛同の声が広がった。全体的に議会事務局攻撃と行政の言い訳が目立った全員協議会だったが、最後は「宮園裁定」でピシャリと収まった。
◆…実のところ、連載は今回の(下)で終了する予定だったが、余りに長くなるので、ここで一旦区切り、「問い合わせただけ」とする行政スタンスの検証は次回掲載(下の下・最終回)にする。【藤本博】