作業を阻む山間部の倒木

戦後、統計を取り始めてから最強の暴風を伴った台風21号が直撃した近畿地方で電柱が倒れたり、強風による飛来物で電線が切れたりした停電が広範囲で続き、10日午後8時の時点でも宇治田原町の約70軒で停電が続いている。宇治市内でも笠取地区で停電してから丸4日が経過した8日(土)夕刻まで電気のない生活が続いた。携帯電話も通じない地域があり、緊急時の通報体制や迅速な被害把握にも支障をきたすことが改めて浮き彫りに。電気のない4日間を過ごした笠取地区を取材した。

東笠取で農業を営む久世谷幸治さん(48)宅は暴風がピークを迎えた4日午後2時半ごろ停電した。
通常はほどなく復旧するが、今回は一晩中、暗闇の生活が続いた。久世谷さん宅は集落から外れた山道を越えた所に孤立しており、携帯電話も電波状態の良い峠付近まで出ないと普段からつながらない。
停電で固定電話も通じず、倒木を払いのけて必死で集落まで出ようとしたが、倒れた電柱で先には進めず、外にトラックが出られるまでに時間を要した。
困ったのが停電の長期化で役目を果たさない冷蔵庫。ネットもつながらず、長引く停電に苦慮したが、幸い、宇治市の災害対策本部が迅速に倒木の除去などの対応にあたってくれたため、不自由ながら、家族ともども電気のない4日間の生活に耐えた。
唯一の救いは地区の水道が通り、断水の危機だけは避けられたこと。「あれで断水していたら持ちこたえられない。気温もひと頃よりしのぎやすく、何とか暮らせた。友人が持ち込んでくれた発電機で風呂を沸かし、シャワーを浴びて生き返りました」と話す。
西笠取の中谷勝彦さん(58)は、京滋バイパスから一般道に出たところが倒木のため不通となり、料金所を出ようとして警備員に止められたことを問題点に挙げた。
「暴風や雨で本線が通行止めとなるのはやむを得ないが、笠取インターから本線に乗り入れはできるのに、降りる際に制止されては笠取地区で暮らす者にとって迷惑な話。倒木除去は結構だが、地区内の生活者が通れる余地はあるのに、機械的に『出られません』では困る。地区の生活実態に見合った臨機応変な規制を心掛けてほしい」と話す。
 本来は停電範囲を自動的に把握する電力会社のシステムも今回の大規模停電で障害が発生した。停電情報が集中し、システム処理能力が追い付かなくなったことが、トラブルの要因。
電力会社に電話しても通じないという市民からの通報が市役所に殺到し、市役所でも被害の把握が大幅に手間取った。
今後も今回と同様の最強台風が虎視眈々と上陸をうかがう中、長期化する停電の事態も想定した初期対応策の策定が急務だ。【岡本幸一】
【写真は最強台風で倒れたり傾いた電柱(宇治市神明、4日午後4時)】