スッポンを笑顔で木津川に放つ八木さん(右)と中川さん

利己的クズ人間と大違い

食糧増産研究のため、大学で実験材料となった城陽市の木津川で捕獲されたスッポン達。実験が終わり、「お役御免で、料亭に売られるのか」と覚悟したスッポンたちだったが、心優しい研究者の手により26日、生まれ故郷の木津川に無事放たれた。利己のため、平気で人を傷つけるクズ人間が横行する時代にあって、放流のため愛知県からわざわざ駆け付けた研究者の行動に、提供した2人の漁師も感動することしきり。

猛禽類、鳥、亀、スッポンから爬虫類まで生き物全般に詳しい城陽市在住のナチュラリスト中川宗孝さん(66)の元に今年4月17日、二ホンイシガメ研究のオーソリティ八木夕季さん(37)から連絡が入った。八木さんは、愛知県刈谷市の企業研究所で、岐阜大学と共同で食糧増産の研究に携わっている。新たな養殖技術を探るため、さまざまな生き物を使い、効率的な増産技術を見出すための先進的研究だ。
八木さんは、爬虫類学会の研究会を通して中川さんの存在を認知していた。父親ゆずりのスッポン漁師であることも知っていた。「メスの卵を産みそうな元気のいいスッポン」が中川さんへの注文内容。中川さんは早速、木津川漁協綴久支部の中川幾久夫支部長(74)と共に、モンドリを仕掛け、注文通り元気のいいメス6頭を岐阜大学に送った。
6頭のうち1頭が無事産卵、22個の卵をふ化させた。お役御免となったスッポン達、通常なら料亭に数10万円で売られるか、所有者とその仲間の胃袋に直行するのが彼女らの悲しき宿命。
しかし八木さんは違った。「研究に貢献してくれたスッポンへの恩返し」の気持ちから、元の木津川に放流することを決め、協力者の中川さん2人と共に捕獲場所へ行き、1頭ずつ放した。スッポンが「ありがとう」と言いながら川の中に消えていく姿を、八木さんは笑顔で見送った。【藤本博】