「弥陀次郎伝説」のテーマで講演する小寺さん

宇治市小倉町の西宇治図書館(嶋田ゆみ館長)は1日、「巨椋池の弥陀次郎伝説」をテーマに読書推進講座を開いた。会場の地域交流室には約60人の市民が集まり、講演に聞き入った。
講師の小寺慶昭さん(70)は龍谷大学名誉教授で、第2回紫式部市民文化賞に輝いた民俗学の研究家。現在も宇治市五ケ庄と木幡の境界付近を流れる細流に名を残す「弥陀次郎(みだじろう)」なる人物について解説した。
「弥陀次郎」の言われとなった文献を総合すると、東一口(または淀)に水次郎という漁師がおり、素行の悪さから悪次郎と呼ばれていた。悪次郎が、訪れた托鉢僧の振舞いに腹を立て火箸を押し付けたところ、僧は本尊のお釈迦様だったと知った。自分の過ちを悔いた悪次郎は、改心して五ケ庄に移り西方寺で往生した、と言い伝えられている。
小寺さんは、鎌倉仏教が普及してきた当時の情勢を踏まえ「仏教では不殺生を戒めており、魚を殺して生業を営むことが人々の良心に背くものだったのではないか」と指摘した。
時代が移るにつれ、漁業を否定する不殺生の教えは人々に受け入れられないものになっていく。小寺さんは「動物の生を犠牲にせざるをえないのが人間であり、せめてもの感謝を『(尊い命を)いただきます』の言葉に込めた」と述べ、不殺生の教えは「無益な殺生を禁じる」という解釈になった、とした。
神道やキリスト教の価値観にも触れつつ、広い知見から数々の資料をひも解いた小寺さん。「伝承は短い間に形成されるものではなく、時代と共に形を変えて伝わっていくもの」と締めくくった。