ふたつの民族が対立して住む常夏の島国
フィジー諸島 かけ足見聞記
高橋内科医院院長 高橋 権也
■まえがき
  WHOは20年前からこの地球上でのポリオ(脊髄性小児マヒ)根絶を目指して、ポリオワクチンの普及に努力してきました。国際ロータリーも民間援助機関として資金面で、またボランティアとしてWHOに協力して、世界中の子供たちにワクチンを接種する活動をしてきました。しかしもう一歩というところでポリオの根絶には成功していません。
 今年の1月の報道によりますと、マイクロソフト社のゲイツ財団は3億5500万ドルを国際ロータリーに寄付しました。国際ロータリーは会員から2億ドルの寄付を募ってこの補助金に上乗せしてポリオ根絶に投入していきます。更に英国政府が1億5000万ドル、ドイツ政府が1億3000万ドルをポリオ根絶の基金に拠出しています。
 私たち京都を中心とするロータリークラブ2650地区は1995年よりWHOに協力して途上国のポリオワクチン接種のお手伝いをしてきました。今年は去る1月24日より31日までフィジー諸島へ行ってきました。この国で得た経験を皆様にお伝えしたいと願ってこの見聞記を10回にまとめました。ご一読いただければ幸甚です。

第1回 ブラというあいさつが町中に満ちる笑顔の島



 常夏の南太平洋の島、フィジーは島中が柔和な笑顔で満ち溢れています。町を歩いていても、山道で出くわしても、時には家の中からも外を歩いている私たちに「ブラ」というあいさつの声が聞こえてきます。私たちもいつも「ブラ」と大声であいさつを返しました。
 フィジー諸島は日本から赤道を越えて7000qの遠くにあります。人口83万人、南太平洋の小さな島々が300以上寄り集まってできた国です。全部の島を集めると日本の四国ぐらいの大きさになります。首都がある最も大きい島、ビチレブ島は四国の半分より少し大きく、海抜1300mの高い山々がそびえています。この島は火山島で、今も若干の火山活動があるようです。ビチレブ島の西海岸にナンディーという都市があり、ここに国際空港があります。成田から直行便で9時間で行くことができます。
 首都は島の東側にあり、スバといいます。人口16万人の大きな都市です。ナンディーからスバまでは片側1車線の幹線道路が島の南側を海岸に沿って通っています。この沿岸をコーラル・コースト(珊瑚海岸)といいます。ナンディーからスバまでは車で4〜5時間、空路では30分で結ばれています。
 私たちの今回の主な活動場所はオバラウ島という直径10qぐらいの離島でした。スバから更に小型飛行機で15〜20分のところにあります。この島のほとんどは密林に覆われていますが、島の東側に人口3000人の小さな町があります。フィジーがイギリスの植民地だった19世紀の一時期、首都が置かれた町です。そのため町の中には植民地時代の教会やコロニアル風のしゃれた建物が残っています。
 日本でフィジーといいますと、インドネシアのバリ島のようなリゾートの島というイメージがあります。新婚旅行でフィジーへ行ったという人もいます。確かに空港のあるナンディー周辺にはリゾートホテルが集まった地域があります。欧米資本の豪華なホテルが軒を並べています。南国の明るい太陽の下、白い砂浜では白人や日本から来たと思われる若いカップルが、椰子の木の下でゆっくりとした時間をすごしています。しかしこのリゾートはフィジーの実生活からかけ離れた別天地です。少し離れると現地の人たちの粗末な家が軒を並べています。
 1月8日から2つの大きなサイクロンがフジーを襲い、大洪水が発生しました。15日のフィジー政府の発表では、死者行方不明12名、避難者9306名に達しています。日本政府はJICAを通して1000万円の緊急支援物質を送ったとの報道がありました。私たちが到着した25日のナンディーでは周辺の道路はいたるところで陥没し、泥がいっぱいでした。
 フィジーは政治が非常に不安定です。過去4回のクーデターで政権が転覆しています。最近では2006年12月のクーデターにより政権が変わっています。その後選挙は行われず、今も軍事政権のままです。
 政局が不安定な理由は、イギリスの植民地政策にその源があります。イギリスは1874年にフィジーを植民地にしました。植民地の産業として砂糖が有望でした。しかし砂糖の栽培には多くの人手を必要とします。フィジーの人たちはもともと作物を作る習慣がありません。イギリスが期待するような労働力にはなりませんでした。そのためインドからたくさんの労働者を送り込みました。現在のフィジーの人口の40%はインド人です。インド人とフィジー人とは経済的にも政治的にも対立してきました。それが現在の政治的混乱を引き起こしています。
 日本からの観光客が減少し、成田からの直行便は3月で廃止になるようです。日本とフィジーとの距離はますます遠くなっていきそうです。
 リゾート地で過ごす限りフィジーは南国の楽園です。しかし細かく見ると決して楽園ではありません。外務省の海外危険情報では「充分注意してください」になっています。 次週よりこれらを詳細に見ていきます。
【写真はビチレブ島、シンガトカ川上流の小さな集落の民家にて:ポリオワクチンの投与風景】



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