ワールドカップ観戦記
梅原 幹正

No3
 さて、久に方ぶりに家宝(ジダンが地団駄人形)を地団駄させながら、海の向こうの韓国へ行くにも拘らず「飛行機使ったら高いだろ〜な〜」とあつかましい事をのたまっては、低価格短期間の海外旅行を多数紹介している旅行雑誌で希望にあったコースを捜していたのだが、どれを見ても飛行機を使用し、そして、最低4日は必要なようで、私の理想である韓国に着いたその日は終日フリータイム(サッカー観戦する)、次の日にはもう帰宅なんてヤツはひとつもなかった。

「まっ、いいじゃん。4日間休みたいって休暇届を提出すれば」
と、頭の中の何かが囁いてくるのだが、私にはそこまでを会社へ希望することには“後ろめたさ”があったため、3日で行って帰って来るという当初の計画は崩したくなかった。
 そんなこんなで結局『飛行機で行くツアーを探す』というコトは諦めた私が、別の行き方があるだろうか。と、考えてみた時思いついたのが「フランスやアメリカじゃあるまいし、なんてったって隣国なんだから、船とかがあるかもしれない」という事だった。大阪から上海までの船があると昔、何かの本で読んだことがあった。

「東シナ海を越える船があるんだったら、日本海ぐらい余裕で超えて行くだろう」とインターネットで調べてみると…。

 「あった」

 検索サイトにとりあえずの目的地『釜山』を入力すると早速に2つのフェリー会社が表示された。

 一つは『カメリアライン』と言う『博多』と『釜山』を結んでいる会社で、もう一つは『関釜フェリー』と言い、読んで字の如く『下関』と『釜山』を結んでいる会社のフェリーだった。とりあえず、京都府城陽市にある私のアパートから近い日本側の港は下関なので『関釜フェリー』をダブルクリックすると、乗船料は最低の席である二等だが、片道8500円という驚くべき安さ。日本から韓国へは8500円だが、韓国から日本へは7650円と1000円近く安い。なぜだろう。

 ちなみに学割まであって、学生はどちら行きでも6800円という安さ。驚きを通り越して呆れたのは、私の最寄駅である近鉄京都線寺田駅からJR下関までの総運賃(片道)が、新幹線を利用するにはするのだが、14000円もかかるという事が判った時だった。


 『国家間の移動より国内移動の方が高くつく』


 この事実はホントに驚きだった…。Tさんもこのフェリーの発見には大変喜んでくれたようで、2人してこれで行く事に決めた。
 とりあえず19時下関出港の船に乗船、翌朝8時30分釜山着、すぐさまホテルを探して、後、試合を観戦。釜山で宿泊。次の日19時釜山出港の船に乗船、翌朝8時30分下関着。そのまま9時44分に下関を出る新幹線に乗れば、13時30分に京都駅に着ける。そうすれば、14時出勤の宇治駅前の会社に勤める私は、直接会社すれば、とりあえず休みは3日で済む、という青写真が出来た。

 青写真のもと「観戦可能な試合は…」と、開催情報と釜山の位置を調べたトコロ『釜山』と釜山から韓国の新幹線である『セマウル号』に乗れば30分程のトコロにある『蔚山』、同じくセマウル号で1時間程のトコロにある『大邱』という3都市で開催される試合に限られてくる。スタジアムが素晴らしいのは『蔚山』で、ここはサッカー専用スタジアム。

 韓国のワールドカップ開催都市のスタジアムはサッカー専用、つまり陸上トラックがないため、観客席とピッチが非常に近いヤツが多い。対して日本開催都市には少ない。当然サッカー専用スタジアムがイイために、『蔚山』での試合を第一候補に上げる。見つけたのは6月21日の準々決勝戦。私はTさんに「これ観戦しようよ」と提案すると渋い顔。残念な事に彼はこの日就職試験があるらしく、どうしても無理らしい。

 諦めて『釜山』と『大邱』の試合を探す事に…。すると、6月6日釜山でのフランスとウルグアイの試合。同じく6月6日の大邱でのデンマークとセネガルの試合、6月29日大邸での三位決定戦、この三試合が観戦可能な試合。

 先にも触れたようにセネガルのとりこになっていた私は、6月6日大邱でのデンマークとセネガルの試合を選択すると、Tさんも同意してくれた。

 私達の見に行く試合がここに決定した…ハズ…だったのだが、同意の言葉に続けてTさんは本当に申し訳なさそうに、
 「けど、パスポートまだ取れてないんですよ…」と一言。
 「えっ」絶句した。

 そういう事だった…。安く上げよう、出来るだけいいスタジアムで観戦しようと、一人“暴走”している私に、彼は現在自分がパスポート取得中であるという事を言い出せなかったらしい。

 最初にも書いたが、韓国開催分チケットを韓国人以外、要するに韓国から見た外国人がインターネットで購入するには、パスポートが必要なのであった。
 「いつ、取れるの…」
 「はい…、6月3日の月曜日です」
 「試や合の3日間前じゃん」
 この試合も諦めた私達に選択の余地は無かった…。
 6月29日の三位決定戦に向けられた私達の照準は、このようないい加減な計画の下に合わせられた。最初に描いていた青写真はあっさり感光し、計画は一からの見直しを余儀なくされた。

 6月2日『FIFAとバイロム社が、大量に余っていた事が発覚したチケットをインターネットで販売し始めたため、回線がパンク状態になっています』という報道を、感光した青写真の焼き直しに苦戦する私はすぐには気付かずにいた…。


※第一回目の冒頭に述べた通り私達は三位決定戦を観戦するため韓国へ渡るのだが、なんにもわかんない現地でTさんは「あの計画のまんま6月6日に来てたら、我々はあっさり迷子になってましたね〜」と呟き続けた…。まさにその通りで、そのまま訪韓していたたら、ハングルの勉強など全くしていなかった私達、宿泊するホテルさえまともに見付けることは出来なかっただろう…(つづく)。

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