洛タイ投書箱



政権交代こそ唯一の希望!
2009年 1月 7日


◆…いまドイツでは『資本論』が、日本では『蟹工船』がよく売れているそうです。空腹を抱えていた学生時代、訳者向坂逸郎にご馳走になった焼飯は呑み込めない『資本論』よりずっと美味でした。またいつしか作家三浦綾子の夫君光世氏(以前城陽市で彼の講演会がありました)から贈られた本、多喜二の母が主人公の彼女の劇作『母』も思い出の作品です。ときに時代は暗転、昨今の世情はまさに“ああ無情”というべきか、「雲を屋根にして」臥す人々の寒きは小説が活写したその頃のパリの冬とかわりません。
◆…オバマ政権誕生はアメリカ政治の静かな革命でしょうか。マーティン・ルーサー・キング牧師譲りの“ことば”の迫力が世界を動かしたのです。ローザ・パークス(最近彼女の自伝を読んで、アラバマ州都モントゴメリの公共バスの白人優先席に座ったため、彼女が逮捕されたことからはじまった非暴力のバスボイコット運動とそれから飛躍的に発展した公民権運動の苦難としたたかさを知りました)〜キング〜オバマに象徴される“自由への大いなる歩み”がまた一歩を踏み出しました。この大不況下の、今月20日の大統領就任演説に世界の注目と期待があつまっています。
◆…昨秋福山市の「ホロコースト記念館」(2007年隣接のキリスト教会が建設)を訪ねました。アムステルダムに行ったときに寄った「アンネ・フランクの家」は、来訪者長蛇の列で見学を断念したのが心残りだったのです。記念館のなかに「アンネの部屋」は実物大で忠実に再現されており、机と椅子が『日記』に向かう少女のありし日を偲ばせます。この『日記』は特殊技術でインクのブルーブラックも複製したもので、数ある展示物の中での圧巻になっています。繊細で鮮やかな隠れ家での日常を描き出した筆力にも驚かされますが、書き直しや抹消の跡が見られなかったのには更に吃驚しました。同じく収容所で犠牲になった少年の“羽根があったらイスタンブールへ飛んで…”と夢みる詩にも唸ってしまいました。“希望の失せたところに歌が生まれる”とはユーゴーの至言、庭に遺された“アンネのバラ”がすべてを包んでいるようでした。
◆…“国民に正直であり続ける”とはオバマ次期大統領の弁。恐慌から戦争が生まれる、とは歴史の経験で、ともすれば戦争が手っ取り早い「公共事業」になりがちな政治をどのように“チェンジ”して、それを国民に正直に訴えるのか、その手腕の発揮に新政権と世界の命運がかかっています。 ひるがえって液状化現象を呈しつつあるわが日本の政治。宰相の朝令暮改のどこまでも軽い“ことば”のなかには未来へ向かう希望の光はありません。さはさりながらこの暗澹たる世にあっても暮らしのあるかぎり、“歌はなくとも希望だけは…!”と祈りたいものです。政権交代はその唯一の希望でしょうか。(妹尾茂治)

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